第四人称の語り部

コトバを生きる日々/ 俳人 /【俳句てふてふ】▶︎▶︎川辺一生

母が亡くなってから1年ほど、

目覚まし時計のいらない朝が続いた。

 

頬を伝う涙に気がついて、

目が覚める。

 

それが朝の日課になった。

 

愛する人を失う。

愛する人のいない朝を迎える。

 

降り注ぐ朝の光が

重い。

 

家族の再生を描いたドラマ『This is us』

 

最愛の夫を亡くしたレベッカが、

子どもたちに悲痛な想いを吐露する

場面がある。

 

「毎朝、必死の想いでベッドを出てるの。それでエネルギーを使い果たして、あとはもう一日抜け殻。空っぽよ・・」

 

愛する人がいない。

その非日常を

ただひたすらに繰り返す。

 

自分だけが時の流れから取り残されたような、

孤独。

 

「あなたのパパが死んだあと、一番嫌だったのはね、時間よ。時間と一緒に私も『前に進め』って言われている気がして・・」

 

愛する人の喪失。

その心の空白は、きっと埋まることはない。

 

もし、のこされた者を慰めてくれることが

あるとするなら。

 

それは、まなざしを変えることなの

かもしれない。

 

そう思わせてくれたコトバがある。

 

「死者たちのことを振りかえるとき、その仕方に気をつけなさい。朽ち果てていくもののことを考えてはなりません。じっと見つめるのです。そうすると、天の奥に最愛の死者の生きた微光が見えてくるはずです」(ユゴーレ・ミゼラブル』より)