第四人称の語り部

コトバを生きる日々/ 俳人 /【俳句てふてふ】▶︎▶︎川辺一生

コトバをつむぐ

f:id:sumsum41chuck:20221019204312j:image

 

言葉はときに、単なる言葉以上の

ちからを持つことがある。

 

大切な人の言葉にホッとして、涙があふれる。

憧れている人の言葉が、生きる糧となる。

 

こころに響く言葉。

人を生かす言葉。

 

哲学者の井筒俊彦は、そうした言葉を

「コトバ」と呼んだ。

 

オーストリアの詩人、

ライナー・マリア・リルケ

 

彼もまた、コトバと向き合い続けた人だった。

 

リルケが詩人を目指す若者に宛てた

手紙が残っている。

 

その若き詩人は、自作の詩の評価を

リルケに託していた。

 

リルケ先生は、私の詩をどう思われますか」

 

返答の手紙の中で、リルケは彼をこう諭す。

 

あなたは外へ眼を向けていらっしゃる、

だが何よりも今、あなたのなさってはいけないことがそれなのです。

(中略)

ただ一つの手段があるきりです。

自らの内へおはいりなさい。

『若き詩人への手紙』

 

こころを震わせるコトバ。

 

それは自己との対話の中でしか、

生まれてこない。

 

言葉を深める。

コトバをつむぐ。

 

それは、

人生を生きることに

いのちを育むことに

他ならない。

 

言葉は生活に

コトバは人生に

 

属しているのだから。

 

言葉があふれるこの世界で。

 

もしあなたが、なにかに渇きを

覚えているとしたら。

 

どこにも行けないような息苦しさを

感じるのなら。

 

それは、コトバをつむぐとき。

いのちを、呼び起こすとき。

 

あなたの問いには、あなたの最も内部の感情が、最もひそやかな瞬間におそらく答えてくれるものでありましょう。

 

ライナー・マリア・リルケ