第四人称の語り部

コトバを生きる日々/ 俳人 /【俳句てふてふ】▶︎▶︎川辺一生

読むこと。書くこと。

 

ずっと靄(もや)の中に佇んでいる。

そんな時期がここひと月ほど続いた。

 

生活に追われ、

時間に追われ、

人生を忘れているような、

 

自分の中にある大切なコトバを

つかみ損ねているような気がしていた。

 

作家の若松英輔氏。

生きるということを深く見つめている文学者のひとり。

 

手を伸ばした先に、

氏の読書論の講座があった。

 

読書とはなにか。

生きるとはなにか。

 

人間の営みの本質。

 

生きるということは、透明な軌道を歩むこと。

 

読むとは、

書くとは、

その道を照らすコトバ、光に出会うこと。

 

問いを生きる。

そして、その問いを深めるために、

読む、書く。

 

世界的な仏教学者の鈴木大拙の言葉がふっと、心を通り過ぎる。

 

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問いを解くとは、それと一つになることである。

この一つになることが、そのもっとも深い意味において行われる時、問う者が問題を解こうと努めなくとも、解決はこの一体性の中から、おのずから生まれてくる。

その時、問いがみずからを解くのである。

『禅』より

 

必要なのは、誰かの答えでも、言葉でもない。

己の中にある問いを見つめる。

その問いを生きる。

 

ただそれだけでいい。

それこそが必要なのだ。

 

その時に人は、読み、書く。

ちょうど息を吸って、吐くように。

 

目の前にあった靄が、

晴れた気がした。