第四人称の語り部

コトバを生きる日々/ 俳人 /【俳句てふてふ】▶︎▶︎川辺一生

2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

【 自作詩#7 】『その祈り』

なつかしいのはその祈り 幼子愛でる大きな手 なつかしいのはその祈り 苦しむひとをみる背中 なつかしいのはその祈り 老いたる指でかく十字 櫛(くし)すべり落ち命果て 静かにかえるその祈り 気づけばいつもそばにあり いまなお生きるその祈り 愛するひとを…

【エッセイ⑦】こえ

棺の重さが痛い。 教会の外へ担ぎ出すと、木枯(こがらし)が吹きつけて、黒の服に粉雪がまとわりついた。 うっとうしい寒さに曇天(どんてん)をにらむ。 「愛する祖母がいま、あなたのもとへ参ります」 * 「Oカワサエ。六歳。学習障害の診断あり。学校に…

【エッセイ⑥】なみだの慰め

背中にあたたかいものを感じて、 そっと目を開いた。 朝日が襖の隙間から射し込んで、 向こうの闇を細く照らしている。 心地良いまどろみに身を任せていると、 背中越しに、ぱたぱたと忙しない足音が 聴こえてきた。 行き来するその音の調子は、 覚えのある…