第四人称の語り部

コトバを生きる日々/ 俳人 /【俳句てふてふ】▶︎▶︎川辺一生

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

【読むと書く日々③】きょうの三冊

毎日、三冊の本を持ち歩く。 朝の支度をする時、 気分で本棚から選ぶ、 その日だけの三冊。 小説、詩集、哲学、心理学・・。 意図しているわけではないけれど、 ジャンルは被らないことが多い。 その三冊を、 通勤の電車や仕事前の喫茶店、休憩の ちょっとし…

【自作詩#6】紅葉

秋雨に うたれてもみじ つややかに いま少しだけ 紅(あか)をとどめて (箱根湯本にて)

時が止まる

ふらりと箱根に降り立った 細かい雨が地面をうち 寒気が足の底から這い上がってくる 凛とした空気を吸い込むと 心地よい冷たさが身体を吹き抜けた 温泉街を横目に雑踏を抜け さらさらと流れる早川をも越えて 老舗の蕎麦屋に足を運ぶ 昼時をとうに過ぎている…

【読むと書く日々②】悲劇の形

貧しさゆえの飢えと渇き。 七人の幼い子どもたちを食べさせるため、 男はたった一片のパンを盗んだ。 貧困が背中を押したその男がいま、 獄につながれようとしている。 この男も他の者たちと同じように地べたにすわっていた。 彼には、これは恐ろしいものだ…

読むこと。書くこと。

ずっと靄(もや)の中に佇んでいる。 そんな時期がここひと月ほど続いた。 生活に追われ、 時間に追われ、 人生を忘れているような、 自分の中にある大切なコトバを つかみ損ねているような気がしていた。 作家の若松英輔氏。 生きるということを深く見つめて…

【読むと書く日々①】昔なじみ 1冊目

古い付き合いの本がある。 なにかに導かれるように出逢い、 心にそっと寄り添ってくれた本。 本棚の決まった場所から いつも静かに見守ってくれている、 ふとした時にページをめくり、読み返してしまう本。 人生を共に歩んできた本。 そのいくつかをいま、手…