第四人称の語り部

コトバを生きる日々/ 俳人 /【俳句てふてふ】▶︎▶︎川辺一生

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

【自作詩 #5】安息

暗闇と 静けさのなかで ねむっていたい

小さなブーケ

母は可愛らしい花が好きだった。 大きな花よりも小ぶりな花を愛でることが多かったように思う。 「思う」と、あいまいな表現になってしまうのは、生前、母に花を贈ったことが数えるほどしかなかったからだ。 今思えば、とんだ親不孝だったと思う。 形にせず…

【自作詩 #4】『同じコトバ』

コトバが通じない これほど哀しいことがあるのだろうか あなたと同じコトバで話したい あなたと同じコトバで愛を交わしたい たったそれだけのこと 本当にたったそれだけのこと

【自作詩 #3】『歌声』

いま、あなたの歌声が、たしかに聴こえる 軽やかなその音色は いつまでたっても、鳴りやまぬ あなたはもう、歌になってしまった どこにだっていけるのに どこにだっていけるから こんなにも遠く こんなにも近く あなたが、聴こえる あふれる涙がこころを伝う…

【自作詩 #2】

初売りの 買い物袋が揺れている 手をとり 腕を組み 行き交う家族 恋人たち どの顔も晴れやかで 場違いなのは私だけ 重箱も おせちも 過去の記憶 つめたい部屋に帰れば たったひとり ほかほかのコンビニ弁当は ちっともこころをあたためやしない せめてものな…

【自作詩 #1 】

霊感などない私には そのひとの声は聞こえない それでも霊性はこの身に宿る たしかな経験とこころを通じて そのひとのコトバは呼びかける 差し出された手のあたたかさ 古い書物のやさしいコトバ 通り過ぎた出来事 目に見えないからこそ 目に見える形で 目に…