母は可愛らしい花が好きだった。
大きな花よりも小ぶりな花を愛でることが多かったように思う。
「思う」と、あいまいな表現になってしまうのは、生前、母に花を贈ったことが数えるほどしかなかったからだ。
今思えば、とんだ親不孝だったと思う。
形にせずとも伝わるという驕り。
気恥ずかしさ。
人は時につまらぬ感情で、大切な人を
ないがしろにするものだ。
そして、大切な人がいなくなったその時。
伝えきれなかった愛の数だけ、
後悔の涙を流す。
その涙の苦さを知ってから、
節目に花を供えるようになった。
今日は、母の誕生日。
ピンクや赤の花がかわいらしい、小さなブーケを買った。
「あら、かわいいわね!」
そんな風に喜ぶ母の声が聞こえた気がした。