デンマークの思想家セーレン・キェルケゴールによれば、人間には死に至る病がある。
絶望である。
映画『ロード・オブ・ザ・リング』は、絶望を描いた作品だ。
冥王サウロンに率いられた闇の軍勢が、平和な世界を襲う。
繰り返される戦争と虐殺。
絶望の闇が広がってゆく。
シリーズ2作目となる本作は、闇の軍団に蹂躙され、滅びゆくローハン王国の物語。
勇敢な男たちは倒れ、残されたのは女子供だけ。
ローハンの王セオデンは、角笛城に立て篭もり、最後の決戦に挑む。
愛するひと
うつくしいこの世界
そのすべてを守りたい。
わずかな祈りはやがて朝の光となり、戦場に夜明けを告げる。
王に忠誠を誓う騎士たちの援軍。
「エオルの子らよ!王の御元へ!」
訪れる奇跡的な勝利の瞬間。
夜のあとに必ず朝が来るように
どんな暗い闇も永遠に続くことはないんです。
新しい日がやってきます。
太陽は前にも増して明るく輝くでしょう。
この世界には命をかけて戦うに足るすばらしいものが、あるんです。
われわれの生きるこの世界も。
閉塞感なるものが社会を覆う。
孤独と孤独が肩を寄せ合って生きている。
死に至る病が、
もうそこまで迫っている。
それでも、
こころに灯るひとすじの光を感じるはずだ。
愛する人とのかけがえのないひととき。
いのちが育まれる奇跡。
父祖が愛したうつくしい大地。
生きるに足るものが、
愛するに足る世界が、
まだ、ここにはある。