私が不信感を感じたのは、それだけではなかった。
忙しく動き回る叔母から少し離れた壁際の座卓の側に、ひとりの女子高生が座っている。
彼女と会ったのは昨日の通夜の席が初めてであったが、その時からずっと、私は彼女のことが気になって仕方がなかった。
それは子ども心をくすぐる好奇心や歳上の女性に対する憧れなどではなく、何か触れてはならぬものへの本能的な警戒心、とでも呼ぶべきものであった。
通夜があったのは、昨日の夕方過ぎである。
父と母に連れられて、通夜が行われる和室に上がると、父の長姉夫妻と次姉がすでにそろっていた。
父方の親族とあまり交流のなかった私は、母のうしろに隠れるように、部屋の中に入った。
「あらあら、ずいぶん大きくなったのねぇ」
長姉にあたる叔母が私を見てそう言うと、
「ほらっ、おばさんにご挨拶なさい」
と母が私を急き立てた。
「こんにちは・・」
と、か細い声であいさつをした私は、恐る恐るその場を見渡してみた。
すると、長姉夫妻の横に、初めて見る顔がある。学校の制服と思しきブレザーを身につけた少女。
私の視線を察したのか、叔母がこちらにジリっとにじり寄ってきて、
「紹介するわね。Sちゃんよ。あなたの従姉妹。仲良くしてやってね」
と言った。