第四人称の語り部

コトバを生きる日々/ 俳人 /【俳句てふてふ】▶︎▶︎川辺一生

愛別離苦とコトバ

愛する人を亡くしたとき

私はコトバを手元に残した。

 

2023.09.06

 

手に食い込む棺の重さが痛い

吹きつける一月の風の冷たさが

その痛みを余計にする

 

黒の服に点々と

粉雪が積もる

 

うっとうしい寒さにやり切れず

曇天の空を睨んだ

 

我が愛する者が 

いま

 

あなたの元へまいります

 

願わくばどうぞ

その慈愛の両腕にしかと

抱きとめまたえ

 

2023. 02. 17

 

 

愛する人がいなくなってから

初めて聖堂に足を運んだ

 

「永遠の記憶・・」

「永遠の記憶・・」

 

司祭と聖歌隊のレクイエムが

香炉の鈴の音が

 

彼がそれまで厳しく封じていた何かを

刺激した

 

愛する人の想い出が永遠に 生きますように

愛する人がこのこころに 生きますように

 

これほど切に願い 信じているのに

 

この身に痛いほどに

あなたを感じているのに

 

なぜ

悲しさは このこころを

捕らえて 離さないのだろう

 

会いたいと想いながら

ただひとり

むせび泣く夜に

 

この祈りはあまりに重い

あまりに重いのです・・

 

2023. 02.16

 

永遠の記憶

美しい旋律

 

その時 たしかに

聖霊と共に あなたの面影を感じた

歌声と共に地が震えるのを感じた

 

あなたはいま

わたしと共にある

 

2023.03.05

聖霊キリスト教における神の位格のひとつ。働きとしての神。プネウマ。

 

こころが日常に戻ろうとしない

はたして 生活のための労働に

なんの意味があるのか

死にゆく運命の我が身に

どれだけの価値が

あるというのだろうか

 

2023. 02.16

 

 

身体(からだ)が動かず

想いと共に

沈んでゆく

 

2023.03.07

 

「お前が私からずっと遠くにあると思うときも

よく私はお前のすぐ間近にいることがある」

 

トマス・ア・ケンピス『キリストにならいて』

2023.03.01

 

たとえ いまのわたしが

どれだけの苦しみの中にいたとしても

 

かつてのわたしは

これからのわたしは

 

わたしを見捨てない

 

2023.04.23

 

こちらに手を振る人がいた

彼もまた 手を振り返した

その交換の中にこそ

人は生きてゆくのだろう

 

2023.08.18

 

彼女の掌のやさしさに触れたとき

彼は久しく忘れていた日常に

呼び戻された気がした

 

2023.08.19