困った。
なんだか語り出すと、意外と語るべきことの多さに気づき、どう進めていこうか、と悩むわけである。
特に今回語るべきことはかなりヘビーになる気がする。
もう過ぎたことだし、できるだけフラットに書きたいと思うけれど、淡々と書くのも嘘な気がする。
人間はどこまでも感情で生きる生き物だからね。
うん、思うがまま、筆を進めようと思います。
例によって、付き合ってくれる物好きな「あなた」に感謝。
ここまでくると愛してるって言いたくなるレベル 笑笑
目次
みんな死んじゃえばいいのに
さて、前回病気のことをお話ししたと思う。
その頃、実は同時進行で発生していたのが、「無職の父親」問題。
僕がちょうど闘病生活を始めた頃、父親は会社をクビになった。
リストラというやつ。
よくある話。
心機一転、マルチ商法でもやってみるとか言い出す。
これもよくある話。
「おまえ、病気なんだろ、このサプリ飲めよ」
息子をモルモットにするクソ親父。
またまたよくある話。
・・って、いやいや、ちょっと待ちたまえ、ワトソン君。
たしかによくある話なんだけどさ、病院でモルモットにされ、家でモルモットにされるモルモットの気持ちって考えたことある?
つぶらな瞳がかわいいね。
じゃねえよ、バカやろう。
この頃からだと思う、僕がやたらとメタルとか聴くようになったの。
もう頭の中はフラストレーションでいっぱい。
もっと露骨にいえば殺意。
患者の目を見ようとしない医者も、口先ばっかりの先生も、何考えてるかさっぱりわからないクソ親父も、みんな死ねばいいのにってそればっかり考えてた。
若気の至り。
いや、すでにこの頃から持ち前の短気を発揮してたのかも。
そんなこんなでマルチに手を出し、
「クイーンエリザベス号で世界一周だ!」
とかありがちな妄想を話し出す父親。
半年もすると、現実を痛感したのか、普通のひきニートに。
どうしましょう、家にニートが二人も誕生してしまったよ。
笑えない話である。
あまりの父親の惨状に、さすがの母親も我慢の限界を迎えたらしい。
ある時、珍しく相談を持ちかけてきた
「あのね、ちょっと相談があるのだけど・・」
嫌な予感である。
「お父さんとね、離婚しようと思うの」
うん、いいと思う。
っていうか、よく今まで我慢してたよね。
で、それは本人に伝えたの?
「うん、伝えたのよ、だけどね・・」
なんだかその後の話は聞きたくない気がする。
「嫌だって言われちゃってね」
でしょうね。
その頃父親は家にいるのが気まずいのか、母親に小遣いをせびってはどこかに出かけるという、ヒモ生活をしていたから、納得 of 納得なわけである。
今離婚されたら、生きていけないもの、ね。
「それでね、申し訳ないんだけど、一緒に説得して欲しいの・・」
ガッテン承知の助!!
と威勢良く引き受けたようなそうじゃないような。
いずれにせよ、その時に僕はもう決めていた。
父親を殺して、僕も死のう。
家族を養う気のない父親も。
病気で暴れまわる息子も。
この家にいてはいけない気がする。
だったら、20年間の恨みを晴らして、気持ちよく死んでやろう。
その後何が起きたかは、あなたのご想像通り。
母親が必死に止めてくれなかったら、僕は刑務所送りになって、新聞の片隅をかざっていたかもしれない。
「無職の少年、父親を撲殺」
よくある話。
今日もどっかで繰り返される悲劇。
だれも見向きもしないけど。
クソみたいな、美しきこの世界。
そして、最期
そんなこんなで、両親の離婚が決まった。
僕が力づくで別れさせた、と言ったほうが正確だろうか。
その頃には僕も人より遅れて大学に行くことが決まっていたし、新生活に便乗して、僕と母と弟は家を出て行くことになった。
その日が目前に迫った時だったと思う。
父親の部屋から絶叫と暴れる物音が聞こえたのは。
いわゆる発狂ってやつ。
オロオロする母親に
「ざまあみろだね」
って、アナ雪のエルサも凍る一言を投げた自分だけは覚えている。
そして、僕らは家を出た。
その数年後、父親は孤独死したらしい。
回収されない大量の新聞。
開けっ放しの窓から24時間漏れるテレビの光。
近所の人の通報で発見されたらしい。
ちょうどあたたかい陽気のせいで腐敗が進み、身元確認に訪れた父方の親族すら識別できない状態だったらしい。
その知らせを母親から受けた時、僕は
「祝杯をあげる」
と言った。
でも正直、全然スッキリはしなかった。
最後の最後まで人様に迷惑をかけた父親が許せなかった。
大人よ、覚悟を決めろ
両親はどちらも売れ残った同士、晩婚も晩婚だった。
だから、父親にとって、家族は邪魔でしかなかったのかもしれない。
家族を見るたびに、「俺の人生、こんなはずじゃなかった」と思っていたのかもしれない。
その気持ちは少しだけ分からないでもないけれど、ふざけんな、である。
家族を愛せない世の中の親たちに言いたい。
甘ったれんな、覚悟を決めろ!!
家族を愛するか。
家族を捨てて、自分の幸せを手にするか。
選択するのは「てめえ」なんだよ。
悲劇のヒーローぶって、その感情を家族になげつけてんじゃねえ。
家族を大切にしようとしない人、クソ野郎だよ、ほんとに。
ごめんね、優しくないから、僕は。
正直、これでもだいぶ端折ってしまったのだけれど。
似たような修羅場が何度も、僕の家庭では繰り返された。
もう今となってはよく思い出せない。
だけど、たしかにあの時に負った傷と業を僕は背負って、今を生きている。
拭い去ることはできない。
今でも時々訳もなく胸が苦しくなる。
業ってそういうことだと思う。
だからこそ、僕は、絶対に決めている。
明るく、前向きに生きてやる、と。
「苦労は買ってでもしろ」
と人は言う。
本当の苦労を知らない人の言葉だな、って思う。
苦労をしないに越したことはない。
背負わなくてもいい業を背負う必要はないのだから。